
【後編|対談インタビュー】会社初のフリーランス人事登用!
ダイレクトリクルーティングの成果アップに大きく貢献(株式会社マネーフォワード)
フリーランス人事との業務共創に成功する企業にお話を伺う対談インタビュー。
今回ご紹介するのは、株式会社マネーフォワード様の事例です。
毎年大規模な採用を行う同社では、母集団形成と候補者体験の向上をどちらも大切にしており、採用にかけるリソースが足りていない状況が発生していました。
そのような状況の中で正社員や派遣社員の登用ではなく、フリーランス人事の登用に至ることになった経緯やプロセスについて、採用ご担当の川口様、現在同社に参画中の倉持様にインタビューしました。
導入前

課題
- 毎年大規模な採用を行う中、母集団形成と候補者体験の向上をどちらも担保するとなると、リソースが足りない状況だった。
- 母集団形成と候補者体験はどちらも質を落とすことができず、アウトソースするとしても人事のプロフェッショナルにお任せすることが不可欠だった。
導入後

効果
- ダイレクトリクルーティングにおいて、高い返信率を継続
- スカウト経由の採用増加により、エージェント手数料が数千万円単位で削減
- リクルーターがクロージングやアトラクトに集中できるようになったことで、承諾率が向上
お話を伺った企業
株式会社マネーフォワード:https://corp.moneyforward.com/
マネーフォワードは、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションと、「すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる」というビジョンを掲げている企業です。
バックオフィス向けSaaSの「マネーフォワード
クラウド」や家計簿・資産管理アプリの「マネーフォワード
ME」をはじめ、金融機関との共創による金融サービスや、請求代行やオンラインファクタリングなどのファイナンスサービスを提供しています。これらのお金にまつわるサービスを通して、企業と個人の多様なニーズに応えるソリューションを展開し、成長を支援しています。

お話を伺った方
■川口 恵司(かわぐち けいじ)/ 株式会社マネーフォワード(写真:右)
新卒入社した企業にて事業部を経験した後、中途採用リクルーターとして2年半活躍。以降、リクルーターに加え、研修企画・人事企画・人材開発に携わり、採用から人事業務全般を担当するキャリアを歩む。現職では、全社横断的な採用の統括マネージャーを務め3年目を迎える。
■倉持 理香子(くらもち りかこ)/ フリーランス人事(株式会社マネーフォワードに参画中)(写真:中央)
サービス業からキャリアをスタートし、30代前半に人事キャリアへ転身。IT企業で8年半インハウス人事を経験し、3年RPO(採用代行)マネージャーを経て、現在はフリーランス3年目に突入。スタートアップからメガベンチャーまで幅広い企業の採用を手がけ、現在は縁のあった企業様と継続的に協業する形でキャリアを形成。
■藤村 大輔(ふじむら だいすけ)/ 株式会社テックビズ HRBIZ事業責任者(写真:左)
大学卒業後、大手商社にて営業職を経験。その後人材系メガベンチャーにおいて採用担当・採用マネージャー、日本たばこ産業(JT)のコーポレート人事としてタレントマネジメント・人材開発・組織開発などを歴任後、株式会社テックビズへ参画。人事責任者を務めたのに、人事フリーランスマッチング事業であるHRBIZを立ち上げ現在に至る。
バランスと柔軟性が生む成果:マネーフォワード流ダイレクトリクルーティングの挑戦
——ここからは、業務についてお聞きします。初期の取り組みはダイレクトリクルーティングだったとのことですが、具体的にどのポジション、どれくらいのボリュームを担当されたのでしょうか?
——この5ポジション採用では、どのようにスカウトを送られていたのでしょうか?
マネーフォワードさんの「バランス」を意識した対応に感心し、同じ方法を取り入れていました。個々のスカウトでテンプレートを活用して効率化したり、特定のスキルを求めるポジションはスカウト内容を慎重にカスタマイズしたりしています。
——ダイレクトリクルーティングの運用において、当時感じていた課題はどのようなものでしたか?
一番の課題は、そもそも時間を割けていないことでしたね。
時間がないことで「スカウトが送りきれていない」という状況もありました。
他にも「職種が多岐にわたり職種理解が難しいこと」も課題でしたね。セールスでも複数ありますし、コーポレート部門では法務や経理、内部監査など、ターゲットが全く異なるポジションがあります。
——多岐にわたる職種を対応する中で、倉持さんが意識されていたポイントは何でしょうか?
正直、最初は職種の多さに驚きました。ただ、採用業務には10年以上携わっているので、コーポレート部門やエンジニア、デザイナーといった職種にもある程度対応できました。
とはいえ、初めて聞くポジションの採用も多かったので、まずはリクルーターや現場社員に積極的にヒアリングしまし、ポジションの詳細を理解しながら進めていましたね。
——業務がスムーズに進んでいるお話を伺いましたが、逆に大変だったことはありますか?
業務委託の方への依頼が初めてだったので、どれくらいの業務を任せられるのかが手探りで大変でした。例えば、業務量やコミュニケーションの頻度、目標設定などです。
目標設定については、返信率やスカウト通数、ピックアップした候補者が部署で承認された割合など、成果の指標をどこに置くべきか議論した記憶があります。
チームで築く採用強化成功の秘訣
——現在、目標はどのように設定されていますか?

ポジションごとに、「返信率やピックアップ率は先月比でこれくらいを目指そう」というコミュニケーションをとった上で目標が設定されています。目標に合わせて、業務の時間配分や進め方を決めています。
候補者のピックアップ率や返信率、応募率などをポジション別にまとめてシートで管理しています。このシートは、業務範囲やスカウトのポイント、使用するSlackのチャンネルなどを整理して、試行錯誤しながら一緒に作り上げたものです。
スプレッドシートに情報を反映することで、シートを見るだけで確認できる仕組みになっています。これで非同期的に業務を進められるので、動きやすい環境が整っています。
——非同期的なコミュニケーションが取りやすいという話がありましたが、他に働きやすさや参画してよかったと感じる瞬間はありますか?
一番大きいのは「バランスの良さ」ですね。採用業務は誰か一人が頑張るだけでは成り立たないです。リクルーターや業務委託、現場の担当者がバランスよく協力し合うことで、良い結果につながると思います。現場の方のチェックなしで次に進めないこともありますし、皆さんが協力的なのはとてもありがたいです。
また、相談がしやすい文化も魅力的です。川口さんだけでなく、どのメンバーも親しみやすく、何でも気軽に相談できます。さらに、あだ名で呼び合うなどの社内カルチャーも親しみやすく、私は「もっちー」と呼ばれています。
——マネーフォワードさんで働くにあたって大切にしていることはありますか?
エージェントからのご紹介とダイレクトリクルーティングが主な手法でした。全体の6〜7割がダイレクトリクルーティングとエージェント経由、2割ほどがリファラル採用、残りがその他の採用手法というのが、うちの基本的な決定経路です。この構成は今もそれほど変わっていません。
——一定のアウトソーシングは必要ですが、部署の理解を踏まえたメッセージングが求められていたということですね。フリーランス人事の方にお願いすることについて、これまでどのような印象をお持ちでしたか?
ポジションの背景や必要なスキルセットを深く理解することを大切にしています。現場から丁寧に情報をいただけるので、「こういう人が欲しい」という要望をしっかり把握することができています。
また、採用は「現場の状況をよく理解して要件を柔軟に調整すること」も大切です。マネーフォワードさんは、採用データや市場状況に基づいて課題を把握されているため、現場の意思決定や採用活動がスムーズです。
返信率向上とコスト低減で採用の質と効率を向上
——倉持さんとお仕事を進める中で、この一年間で「任せてよかった」と感じた瞬間はありますか?

今、お話ししたことがすべて詰まっていると思います。正直、スカウトを送ることより「どれだけ事業と採用の意義を理解して取り組んでくれるか」が重要だと考えています。「良い人材を採用しよう」と部署に入り込んで事業や組織の理解を深めようとする倉持さんの姿勢が本当にありがたいですね。その上で、結果を出していただいている点も素晴らしいです。
あと、スカウト返信率が向上したことも良かったと感じています。もともと当社の返信率は低くはなかったのですが、倉持さんが入ってくれたことで返信率はさらに高まり安定して保たれています。たった数パーセントの改善でも採用においては非常に大きな意味があります。
ポジションにもよりますが、比較的高い結果を維持できています。
採用コストについてもメリットが大きかったです。倉持さんにご協力いただいたことで、昨年比で10名分ほどの枠が倉持さんのおかげでダイレクトリクルーティングで採用できました。その結果、採用コストが数千万円単位で低減されていたんです。
——短期的な成果にはどんなものがありますか?
リクルーターがクロージングやアトラクトに集中できるようになったことですね。その結果、承諾率が格段に上がっています。もしスカウトもリクルーターが全て行う状態が続いていたら、ここまで高い承認率にはならなかったと思います。リクルーターの業務が効率化して本来の業務に集中できる環境になり、負担が減ったのは確かですね。
——当初の課題である「量と質の確保」と「候補者体験の向上」が解決しているように感じますが、そのあたりはいかがですか?
おかげさまでお任せしていることは解決しました。ただ、採用数は引き続き必要です。一部の業務はリクルーターが対応しているので、業務をどう広げていくかを考える必要があります。
——倉持さんが参画して1年を迎えましたが、2年目以降の目標や期待する役割はありますか?
スカウトにこだわらず、やりたいことや広げたい業務領域はお任せしたいと思っています。例えば、新たに採用チームに入った人たちにスカウトのノウハウを伝授し、スカウトの質を担保する役割を担っていただくのも面白いかなと思っています。
(本記事公開の2025年3月時点では既に、倉持さんからのノウハウ伝授が進んでいるとのことでした)
人的資本経営の新しい形:フリーランスのプロ人材を活かす採用戦略
——総じて、HRBIZに紹介をお願いしてよかったと思う部分はありますか?
まず、中途採用部だけでなく他部門でも支援いただき助かっております。
ご担当者様をお繋ぎいただき、むしろ感謝しております。
他にも、提案スピードが本当に速く助かっています。様々な候補者をすぐにご提案いただけるので、他社を検討する前に決まるケースも多いです。それは藤村さんの仕事の速さだけでなく、データベースに優秀な方が多い証拠だと思っています。
他社さんから「いい紹介会社知りませんか?」と聞かれたら、必ず貴社をつなげています。
日本一の採用チームを目指して
——では最後に、倉持さんの今後のキャリアについてお聞きしたいです。マネーフォワードさんでどんな自己実現を目指しますか?
今後は、経験を活かしてスカウト業務以外にも挑戦してみたいです。私は採用人事のキャリアが長く、会社のさまざまなポジションに触れることで、「この状況にはこういう人材が必要」という組織的な視点も養えています。この経験を活かしていきたいです。
——川口さんは、今後倉持さんとどのような採用活動をしていきたいですか?また、会社としての展望も教えてください。
「採用で終わらない採用」を続けていきたいですね。候補者が選考を通じて「この会社を好きになった」と感じてくれるような、採用にとどまらない価値を提供したいです。
その中で、スカウトや他の業務でも新しい価値を一緒に作り出していけたら嬉しいですね。
部としては、「日本一の採用組織を作る」というミッションを掲げています。やりたいこと、やるべきことは山のようにありますが、一歩ずつ着実に進めていきたい。そして、「マネーフォワードの採用はすごい」と言われ続ける組織を目指していきたいですね。
新しい形で人材を受け入れることを決めた川口さんをはじめマネーフォワード様、持続的に成果を出している倉持さん。そして、「日本一の採用チームを作る」というミッションに向けての取り組みは、フリーランスの受け入れを検討している企業にとって大きな勇気やヒントになると思います。
特に「どの領域をどの人に任せるべきか」をしっかり意思決定している点は、他社が実践できていない先端的な取り組みだと感じています。倉持さんの理想とする「Will(目標)」を持ちつつ、「Can(できること)」をアップデートしながら、良い関係性を築いている働き方も印象的でした。

——日本一の採用チームを目指すというお話や両者の関係性の良さが印象的でした。インタビューへのご協力、ありがとうございました!
カメラマン:桑島 圭佑(株式会社テックビズ / PR部)
インタビュアー:三宅真愛(株式会社テックビズ / HRBIZ事業部)
執筆:小林優希(株式会社テックビズ / マーケティング部)
最初は5ポジションほどからスタートしました。ただ、ポジションを明確に固定したわけではなく、まずは一定の時間内でどれくらいのボリュームを対応できるか探る形でしたね。2か月間ほどは試行錯誤して進めた記憶があります。